甲状腺疾患の中でも患者数が多く、さらに病気と気付かずに未治療のまま過ごしている人も多いと言われるバセドウ病。甲状腺の活動が異常に活発になってしまう疾患です。
有名人が病気を公表することもあり、それでこの病気を知ったという方もいるのではないでしょうか。日本では200人に1人ほどが抱えている疾患と考えられています。

20代~30代の女性がもっとも発症しやすく、妊娠・出産に積極的な年齢層のため注意が必要です。
疾患の男女比率は1:4。その他の甲状腺疾患の男女比率は1:9なので、男性の患者数の割合が高めであり、妊娠を望む男女はしっかりと知っておくべき疾患なのです。

バセドウ病の病名の由来はドイツ人医師カール・フォン・バセドウにちなんで付けられましたが、英語圏ではイギリス人医師の名前から“グレープス病”と呼ばれています。呼び方は違っても同じ疾患のことなので、ここでは“バセドウ病”として進めて行きますね。

参考:日本医師会
https://www.med.or.jp/forest/check/basedow/01.html

バセドウ病はどんな病気?

前回“甲状腺の基本的なしくみ”について触れましたが、甲状腺は人間の“新陳代謝”や“交感神経”に大きく携わっており、「元気のホルモン」とも呼ばれる甲状腺ホルモンを分泌している器官です。

バセドウ病とは、その“甲状腺ホルモン”を過剰に作りすぎる疾患のこと。
身体は細菌やウイルスなどの外敵から身を守る「免疫機能」を持っています。
その免疫機能がエラーを起こし、自分自身を攻撃してしまう抗体を作ってしまい、その抗体が甲状腺を刺激してしまうとホルモンをたくさん作り過ぎてしまうのです。

生きていく為にかかせないホルモンで、分泌が止まると1~2か月で命を失ってしまうほど大切なホルモンですが、生成量・分泌量が過剰になってしまうと身体にさまざまな異変が。

内分泌系のお話になると必ず言いたくなるのですが、一生のうち分泌されるホルモンは極々微量で、ティスプーン1杯分とも例えられます。
そんな微量な世界で身体は微調整を繰り返し、健康を保とうとしているのですから、正常でいることの素晴らしさ、そして難しさが身に沁みますよね。

ナノミリグラムの世界で甲状腺ホルモンの分泌が乱れ分泌が増えてしまうと、身体はずっと走っているような状態に置かれます。
マラソンを思い浮かべてください。息を切らし駆け抜ける姿、辛そうで応援したくなりますよね。甲状腺ホルモンが過剰分泌すると、座っていても食べていても眠っていても、ずっとマラソンしている状態になってしまうのです。
とてもじゃないけど普通の生活は送れませんよね。

自己免疫疾患内分泌疾患代謝異常とも表されるバセドウ病ですが、きちんと検査して原因を探り、治療をすれば妊娠・出産も可能です。
怖がらずに慌てずに、病気を知った瞬間からすぐに治療をはじめることが大切ですね。

参考:二田哲博クリニック
http://tenjin.futata-cl.jp/thyroid/thyroid_04.html

バセドウ病と妊娠の関係

妊娠にホルモンが大切なことは口を酸っぱくして語り続けていますが、甲状腺ホルモンも大きく関わっています。生成・分泌に異常があると“無排卵症”や“月経不順”を起こしてしまうことも。妊娠の確立を上げるためにも正常値に近づける必要があります。

希望が叶い、妊娠できた場合にも妊娠初期からキチンと調節していかなければなりません。
甲状腺ホルモンは胎児が正常に成長・発達するために必要不可欠なホルモンです。
そのホルモン分泌が過剰な状態で妊娠した場合、流産・早産・妊娠中毒症の危険性が増してしまいます。

とても心配になってしまいますが、母親がバセドウ病であったとしても、その影響で胎児に奇形が出てしまう確率が上がるという証拠はありません。
早めの対策しだいで、母子ともに健康で安全な妊娠生活を送ることができるのです。

妊娠する前の妊活中にバセドウ病に気づいた場合

妊娠する前の妊活中にバセドウ病に気付けたなら、すぐに治療をスタート。
甲状腺ホルモンの数値が高く、早期の治療が必要な場合は手術アイソトープ治療で、まず母体の状態を正常に近づけます。

アイソトープ治療を受けた時は、半年ほど身体を休めてから妊娠を計画していきますので、ドクターから詳しく説明を聞く必要がありますね。
投薬治療であれば、薬を飲みながらの妊活が可能です。お薬の効き方は個人差がありますので、3か月ほど様子を見て副作用が強く出なければより安心。少しづつホルモンを整えながら妊娠を目指していきます。

少しでも早く改善することで、妊娠率を上げたり初期流産の確率を下げたりと、効率よく安心な妊活に取り組めるのです。
妊活とバセドウ病の治療は薬の管理や身体の状態をドクターにきちんと把握してもらう必要があります。
婦人科や不妊治療のクリニックに通っている場合は、内分泌科や甲状腺の専門クリニックと連携を取ってもらい、ドクター同士でしっかりと情報を共有して治療しながらの妊活をすすめていきましょう。

妊娠してからバセドウ病が判明した場合

妊娠してからバセドウ病が判明した場合は投薬治療となり、定期的に血液検査をしながら経過を観察します。薬の種類や容量もドクターとよく相談し、薬の効能と副作用のバランスを観察しながら胎児の成長を見守りましょう。
抗甲状腺薬(プロパジール・チウラジール)は母体だけでなく血液を通して胎児まで届き、赤ちゃんのの甲状腺機能も整える効果があります。胎児が無事に発育するために大事な働きをてくれますので、安心して服用してください。
妊娠初期を乗り越えることができれば、ホルモン生成・分泌が落ち着いてくる場合が多く、それに伴い薬の量も減らしていきます。

“妊娠を望んでいるから”・“妊娠できたから”と、自己判断で服薬をストップしたり量を減らしたりしてはいけません。
薬を飲みながらの妊活・妊娠は不安もあるでしょう。でもその薬の助けがあってこそ、繋げる命があるかもしれません。

バセドウ病とは何かを学び、その時に必要な対策をドクターと相談しながら選び、続けていくことが大切ですね。

参考:岡本甲状腺クリニック
http://www.thyroid.jp/solving-cat/basedow

授乳と産後の注意点

薬を飲みながら授乳も可能です。バセドウ病の治療でよく処方される“プロパジール・チウラジール”という薬は母乳への移行が少ないので、薬を飲む時間や授乳量などを相談しながら服用を続けます。
ドクターからの指導を仰ぐ必要はありますが、母乳を与えることもできるのです。

出産後は激しい免疫変動・ホルモン変動が予想され、普段の身体とは違うと感じます。症状が一時的に落ち着いたとしても、完治してるわけではありません。
バセドウ病は産後に急激に悪化することがあるので、定期的な検査は続けていきましょう。

健康体の女性に比べれると妊娠前から抱える不安は拭い切れませんが、日本全国に専門医がおり、たくさんの症例があります。
治療しながら妊娠・出産を経て、元気な赤ちゃんを育てることができるので、病気が見つかったとしてもどっしりと構えましょう。

参考:KUMA HOSPITAL
http://www.kuma-h.or.jp/disease/148/

新生児の甲状腺機能亢進症

母体の血液に含まれるTRAb(甲状腺を攻撃してしまう抗体)が胎盤を通じて胎児に流れてしまい、赤ちゃんの甲状腺を刺激して過剰な甲状腺ホルモンを作らせるようになることがあります。
「新生児甲状腺機能亢進症」と呼ばれ、重度の場合は心不全等による生命のリスクがありますので、早期診断と適切な治療が必要です。

日本では1975年からすべての新生児先天性代謝異常症と一緒に甲状腺刺激ホルモンの検査をして、早期発見・早期治療に努めていますが、出生前に出来るだけ早く知っておく必要があります。
母体の状態をしっかりと検査して、妊娠後期から新生児甲状腺機能亢進症を予測し、出生前に診断と治療の準備をしておくことが大切です。

胎児へTRAbが移行してしまったとしても、このタイプの新生児甲状腺機能亢進症は”赤ちゃんの血液中に母親から貰った甲状腺抗体が残っている間”だけしか続かず、産後3週~12週以内には自然に治癒します。

参考:日本小児内分泌学会
https://www.shouman.jp/details/5_10_16.html
参考:野口病院
http://www.noguchi-med.or.jp/about-illness/pregnancy

バセドウ病とうまく付き合う

病気と聞くと他人事のように思いがちですが、バセドウ病は決して珍しい病気ではなく、自分や周囲にいつ降りかかるかわからない疾患なのです。

甲状腺専門の病院が近くにあればいいのですが、一般内科で診察を受けている方も多く、ドクターの説明で十分に理解できないこともありますよね。
限られた診療時間の中でできるだけ不安を取り除けるように、事前に予備知識を入れておき、心のモヤモヤの整理する癖をつけていきたいですね。

次回の記事ではバセドウ病の様々な症状について詳しくみていきましょう。
「バセドウ病の様々な症状」

甲状腺の基本的な知識や仕組みについては、こちらの前回記事をご覧ください。
「甲状腺ってなに? 女性に多い甲状腺の病気」

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