病名を告げられた瞬間、頭をよぎるのは「治療したら治るの?」という思いではないでしょうか。病気にかかってしまったことを悔やむより、受け止めて元の正常な状態へ近づけるのが目標ですよね。

実はバセドウ病をはじめとする甲状腺の疾患のほとんどが“完治”は難しいと言われています。
甲状腺疾患の大半を占めるバセドウ病橋本病の原因は、自己免疫疾患です。
自己免疫疾患とは、ウイルスや病原体などの外敵を攻撃するはずの自己抗体が、誤って自分の細胞を攻撃してしまう状態。
一度エラーを起こしてしまった抗体は、元に戻すことはできませんので、治療の過程で血液検査の数値や体調を見ながらうまく付き合っていくという考え方です。

バセドウ病では、完治ではなく寛解(かんかい)を目指していきます。
寛解とは“病状が治まっておだやかであること”です。
完全には治らないという観点から、再び病状が悪化してしまうことも、再発ではなく再燃(さいねん)と呼びます。
女性に多い病気ですから、重要なのは妊活・妊娠・出産・授乳と治療との関係ですね。
先のコラムでも触れましたが、より詳しく学んでみましょう。

参考:あすか製薬株式会社
https://www.aska-pharma.co.jp/mercazol/faq/index.html

治療の種類

バセドウ病の治療方法は大きく3つに分かれ、いずれかの方法で甲状腺機能を正常に戻していきます。

外科的治療

手術。病状や年齢に応じて手術方式を選択。

放射線療法

アイソトープ治療。内用療法ともいう、放射性ヨウ素を飲む治療。

内服的治療

投薬治療。抗甲状腺薬を定期的に飲む治療。

年齢・甲状腺の状態(腫れやしこり)・妊娠を望んでいるかなど、その時に一番有効な治療方法を選びます。
それぞれどんな治療で、どんなメリットデメリットがあるのか見ていきましょう。

バセドウ病に行う手術

手術を第一の選択肢に挙げる病状・理由はいくつかあります。

まずは「悪性腫瘍合併症」です。
良性でも甲状腺腫が大きいと取り除くことで症状の改善が望めるので、手術適応となります。
手術の特性上すぐに結果が出せるため、妊娠や出産のためにはやく治療したい・薬がアレルギーや強い副作用で使用できない・薬やアイソトープ治療の効果が出にくいという方にはすすめられる治療です。

手術の目的は、外科的手術で“甲状腺ホルモン産生組織”を切除し、甲状腺ホルモンの生成・過剰分泌を改善すること。
術式は、甲状腺組織をどれくらい残すかで変わります。2g以上残す【亜全摘術】・1g以下残す【準全摘術】・甲状腺をすべて取る【全摘術】の3種類。

以前は亜全摘術が標準術式でしたが、術後に甲状腺機能が正常になったのは半数程度で、長期的には残した甲状腺が大きくなり再発するという結果から、最近では準全摘術もしくは全摘術が主流になってきました。

手術の最大のメリットは、すぐにそして確実に改善できるということ。長期にわたり投薬治療を受けていたとしても、手術の翌日から抗甲状腺薬をストップすることができます。
再燃が少ないのも手術の利点です。

デメリットは手術に伴う合併症の可能性。全身麻酔での手術なので、主治医や麻酔科のドクターからしっかりと説明を受けましょう。

術式が全摘術または準全摘術だった場合、術後は“甲状腺機能低下症”となり、終生甲状腺ホルモンの服用が必要です。薬とはいえ抗甲状腺薬と違い副作用がないので、妊娠中~授乳中でも安心して服用することが可能。通院頻度も数カ月~1年に1回と、負担が軽くなります。

気になる傷跡は、首の鎖骨の少し上に残り、女性にとって悩みのひとつです。5㎝~10㎝首の横シワに合わせて切開し、出来るだけ目立たないように配慮されますが、体質によりどうしてもケロイド状になってしまうことも。
最新の医療現場では首ではなく脇の下を切開し、”内視鏡”を駆使して甲状腺を摘出する手術も行われています。見た目や術後の心身への負担を考えると、こういう選択肢が広がっていくことを期待したいですね。

声帯の近くの切開するので、術後一時的に声がかすれたり高い声が出なくなることがありますが、ほとんど方は3~6ヶ月くらいで回復します。
1週間ほどの入院が必要なのも大変ですが、今後の来院頻度が減ることを思えば、大したデメリットではないかもしれませんね。

入院・手術・退院の、一般的なスケジュールはこういう流れです。

入院1目     術前検査
入院2・3日目 手術(当日は朝から絶食・手術時間は1~2時間)
手術当日   術後は絶飲食・全身麻酔のため安静
術後1日目   朝から食事がとれる、歩行も開始
術後2日目   抜糸・声帯の検査
術後7日目   経過が良好であれば退院

退院後の仕事復帰は1週間後くらいが推奨されていますが、仕事内容や体調次第でゆっくり検討してください。

参考:KUMA HOSPITAL
http://www.kuma-h.or.jp/disease/35/
参考:伊藤病院
https://goo.gl/fQJcV5

アイソトープ治療

バセドウ病に用いられるアイソトープ治療とは【放射線ヨウ素治療】のこと。
アメリカではバセドウ病患者の80%~90%が受けていて、70年の歴史がある治療法です。
日本へも1988年に上陸し、専門の医療機関ではたくさんの治療実績があります。

バセドウ病患者の中でも、とくにこの治療を推奨されるのは次のような場合です。
心臓病や肝臓病などの慢性疾患がある、甲状腺腫を小さくする目的、薬がアレルギーや強い副作用で使用できない、投薬中止後や手術(亜全摘術)後に再燃してしまったなど。

この治療に向かないのは、半年以内に妊娠希望~妊娠中~授乳中の女性です。未成年者も他の治療を優先。バセドウ病の眼の症状があれば眼の治療を先に行い、症状が落ち着いた状態ではじめます。

アイソトープ治療の目的は、ヨウ素を用いて甲状腺細胞を減少させ、甲状腺ホルモンの生成・過剰分泌を改善すること。
ヨウ素入りのカプセルを1~3個飲み込むと、病変のある甲状腺細胞にだけ放射性ヨウ素が集まります。甲状腺に吸収されたヨウ素は、放射線を発して徐々に組織を破壊し、甲状腺ホルモンの分泌量を減らしていくのです。

この治療のメリットは、甲状腺以外の臓器にはまったくといっていいほど影響がないこと。
放射線ヨウ素は身体のほかの部分に集まることはなく、すぐにおしっこになり体外へ排出されます。放射線と聞くとガンになりやすくなるというイメージを持っている方もいますが、たくさんの治療歴の中で甲状腺ガンや他のガン、白血病にかかる確率が増えるようなことはないことが確認されており安心です。

外来での治療が可能ですので、長く仕事を休んだりする必要もなく、働き盛りの方でもスケジューリングしやすい治療法。
カプセルを飲むだけなので痛みの心配もありません。
抗甲状腺薬にみられるような副作用が無いのも、大きなメリットのひとつですね。

デメリットは効き目がゆっくりなこと。カプセルを飲んだ後、ゆっくりと時間をかけて効いてくるので、しばらくは抗甲状腺薬を続けながら数値の変化を見守り、徐々に薬を減らしていきます。
手術後と同じで治療が進むと“甲状腺機能低下症”になりやすく、終生甲状腺ホルモンの服用が必要です。また薬…と悲観的にならず、“副作用のない元気の粒”と考えましょう。

具体的にどんなことをするのでしょうか。
治療をはじめる前に“ヨウ素制限”が必要です。アイソトープ治療の1~2週間前から物から取るヨウ素を控えます。
海草類(のり・わかめ・昆布・ひじき)や寒天などは食べない、ヨード卵もダメです。和の心、お出汁が一番要注意ですね。ヨウ素を多く含む医薬品(うがい薬、ヨード造影剤など)にも気を付けます。
アイソトープ治療の効果を最大限に引き出すために、抗甲状腺薬を一時的に(2週間ほど)ストップするのも大切な準備のひとつです。

ヨウ素制限が出来たら、次は外来での検査へ。
アイソトープカプセルを飲む前に、甲状腺にどれくらいアイソトープが取り込まれるか、「摂取率検査」をします。この検査もカプセルを飲むだけで、服用24時間後に摂取率を確認。特殊な装置で甲状腺を撮影し、甲状腺ヨウ素摂取率を測定。結果を踏まえ、アイソトープ治療に使用する放射性ヨウ素の量を決定します。
翌日、再度外来にて放射性ヨウ素の入ったカプセルを服用。
治療はこういう流れで進んでいきます。

甲状腺に取り込まれなかった放射線は、ほとんど尿中に排出されますが、ほんの微量だけ、汗や唾液に含まれますので注意が必要です。
本人にとって安全な治療法ですから、周囲に危険を及ぼすことはありませんが、アイソトープ治療を受けたら知っておくべきマナーがいくつかあります。

守って欲しい3日間の約束です。
はやくアイソトープを排出させるため、たくさん水分を摂る。お手洗いで排泄後、2度水洗を流す。お風呂は最後に入るか、シャワーのみにする。一人で寝る。キスやセックスは避ける。

小さな子供と接するには、さらに慎重に注意します。
7日間は子供や妊婦と親密に接触しない。添い寝はしない。15分以上子供を抱かない。
小児や妊婦と接する機会のある職業の方は2週間の休職が必要です。

妊娠を考えるならば、6か月間は避妊しましょう。放射性ヨウ素の大部分は1か月もすると身体から消失しますが、絶対に安全であるために避妊期間は6か月間としています。

妊活中バセドウ病が発覚した場合、治療と妊活どちらを優先すべきか悩むかもしれません。ドクターにしっかり相談して最善の治療法を選ぶ必要がありますね。

放射線と聞くと怖くなってしまいますが、アイソトープを飲む本人が心配ないのですから、他人に影響がでるはずがないのです。安心して臨みましょう。

参考:日本アイソトープ協会
https://www.jrias.or.jp/pet/cat/102.html
参考:日本甲状腺学会「バセドウ病内用療法の手引き」作成委員会
http://www.japanthyroid.jp/public/img/basedou.pdf

今までの記事でバセドウ病と妊娠の関係、バセドウ病の症状など掘り下げています。
よかったらご覧ください。
「バセドウ病=(甲状腺機能亢進症)と妊娠」
「バセドウ病の様々な症状」‎

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