今回は甲状腺機能低下症の代表格【橋本病】についてのお話です。妊娠を望むすべての女性に知っておいて欲しい情報ですので、詳しくわかりやすく噛み砕いていきます。
1912年に九州大学の橋本策博士が世界ではじめて報告したもので、世界でもHashimoto thyroiditisと呼ばれ広く知られている病気です。甲状腺疾患の中でもっとも多く、日本人女性の10人に1人が抱えているとも言われています。男女の発症割合は女性が94%。特に20代後半~40歳代の患者数が多いのが特徴なので、妊娠・出産と深く関わってきます。

甲状腺という臓器は代謝をつかさどる臓器です。骨も臓器も皮膚も髪の毛も、すべての細胞が新陳代謝により、成長したり新しく生まれ変わったりしています。
橋本病とは、甲状腺ホルモンの分泌が減り新陳代謝が低下してしまう、同じ甲状腺の異常でもバセドウ病とは正反対の疾患です。「元気のホルモン」である甲状腺ホルモンが不足すると身体に、さまざまな影響を及ぼします。

妊娠出産に関する影響はとくに心配で、不妊不育症流産早産妊娠高血圧症・子供の知能低下…と避けたいものばかり。そう聞くと不安が膨らんでしましますが、甲状腺ホルモンを正常に保つことができれば回避できると捉えると希望が持てますね。
妊活中~妊娠中~授乳中、すべての期間治療が可能ですので、その点でも安心です。
産後に甲状腺ホルモンが自然に戻る方も多いので、治療も一時だけで済む場合も。
最近では甲状腺に詳しい産科・不妊治療科のドクターも増えていますので、気になる症状がある時は小さなことでも相談し、早めに検査を受けましょう。
橋本病のメカニズムを知っていれば事前に対策も可能なので、疾患による影響を最小限度に留めることができるのです。

参考:国立成育医療センター
https://goo.gl/MMVbZ5
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-hashi.html

橋本病はどんな病気?遺伝するの?

橋本病【自己免疫疾患】のひとつで、本来ウイルスや菌などの異物を攻撃して自分を守るはずの自己免疫がエラーを起こしてしまい、自分自身の正常な細胞や組織に対して攻撃を加えてしまう病症です。
自己免疫疾患を原因とする病気は他にもたくさんありますが、一度エラーを起こしてしまった免疫を元に戻す方法はなく、攻撃によって働きが弱まり分泌が減ってしまった甲状腺ホルモンを補う形で治療していきます。
免疫異常が起こる原因としては、遺伝的な体質家族歴出産ヨードの過剰摂取ストレスなどが考えられていますが、まだまだ解明されていない部分もたくさんあります。

遺伝的な体質・家族歴、というのは家系に甲状腺疾患を抱えた人がいるかということ。家族の誰かに疾患が見つかったきっかけで、血縁のある方の中に同じ検査結果が出ることもよくある話です。妊娠・出産を望む際に、父方・母方に甲状腺疾患がいないか尋ねてみることをおススメします。

はっきりとした自覚症状が現れないこともありますが、治療が必要ないわけではありません。甲状腺の異常は疑ってかからないと見逃されやすい疾患です。専門医や専門クリニックも少ないので、うつ病更年期障害と間違われてしまうことも。甲状腺の異常に気付かず通院・治療していてもなかなか症状は改善されないため、治療困難と誤解を招いてしまい心身ともにツライ思いをしてしまうかもしれません。
甲状腺ホルモンを補うと数か月で数値の変化が見込めるため、今まで体質や疲れ、老化現象だと思っていた慢性的な倦怠感から解放され、元気を取り戻せます。

参考:田尻クリニック
https://www.j-tajiri.or.jp/book/b/b08/

橋本病とつわりの関係

橋本病だからつわりが重いというわけではありません。
妊娠すると胎盤から“hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)”というホルモンが分泌され、そのホルモンが甲状腺ホルモンと似ているため、甲状腺に影響を与えてしまうのが原因です。

妊娠初期(8〜12週頃)に胎盤が生成するhCGが甲状腺を刺激してしまい、一時的に甲状腺ホルモンの異常分泌が起こることがあります。
甲状腺ホルモンが過剰分泌すると、一過性甲状腺機能亢進症という橋本病とは真逆な状態に。妊娠前は甲状腺に異常が見られなかった人でも発症することがあります。
血中のhCG値は6000IU/lを越え、つわりが重い女性はこの病症が起こっている可能性があります。
妊娠中期になるとhCG値が下がり、つわりが落ち着くころに自然に治まることがほとんどですが、一過性甲状腺機能亢進症の症状が強く出る場合は治療が必要。

妊娠中はホルモンの変動が激しく、もともと橋本病であっても妊娠初期に一時的に機能亢進症→妊娠中期から後期に改善→分娩後に再機能低下症となる傾向にあります。
里帰り出産などで病院を変わる際には、自分の病状やその時の症状をドクターにしっかりと伝えることが大切ですね。

参考:高橋医院
h tp://www.hatchobori.jp/blog/lefty/cat1/cat111/

赤ちゃんは大丈夫? ダウン症の確率

ただでさえ病名を告げられると言いようのない不安に襲われるのに、ましてや妊活中妊娠中であればそれは心痛となりあなたを苦しめるかもしれません。
真っ先に頭に浮かぶのは赤ちゃんへの影響ではないでしょうか。

医学的に機能低下症とダウン症および奇形発生率についての明らかな関係は報告されていません。関連性はないと言い切るドクターもいらっしゃいます。
しかし関連性がないから何もしなくていいわけではなく、妊娠前から治療に取り組むことが大切です。妊娠成立後に甲状腺ホルモン必要量は約1.5倍に増えるため、補うホルモン量を増やす必要があります。妊娠が判明したらすぐにドクターに相談し、薬の量や検査頻度などの指示に従いしっかりと管理して不安を減らしていきましょう。

参考:日産婦誌60巻3号
http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6003-041.pdf
参考:岡本甲状腺クリニック
http://www.thyroid.jp/qanda/basic-qa/comment-page-41

子供の神経・精神・知能発達への影響

最近の研究で母体の低甲状腺ホルモン状態は、新生児神経発達障害を引き起こす可能性があるとわかってきました。妊娠中に甲状腺機能の低下を治療しなかった場合、子供の小児期の神経心理的発達悪影響を及ぼす可能性がある事も報告され、正しい知識と診断・治療の重要性が注目されています。

自分の行動次第で生まれてくる赤ちゃんへの悪影響を防ぐ事ができますので、怖がらずに向き合う必要がありますね。
札幌市では1986年から、全国に先立ち「妊婦甲状腺スクリーニング」という検査を実施。妊娠中のママと赤ちゃんの健康を見守り応援する取り組みで、たくさんの早期発見・早期治療につながっています。

参考:東京都予防医学協会
http://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/nenpo/pdf/2014/06_01.pdf
参考:札幌市
http://www.city.sapporo.jp/eiken/org/health/pregnant/

葉酸の重要性

後のコラムで食事について詳しく触れますが、橋本病と診断されるとヨード制限が必要に。昆布を大量に摂取したりヨードが含まれるうがい薬を使わない限り、そうそうたくさん摂取することも難しい成分なので、過剰に心配する必要はありません。

ここでよく混同してしまいがちなのが「葉酸」です。ヨードと葉酸は別の成分です。葉酸は母体にとっても赤ちゃんにとっても、妊娠中~授乳中に欠かすことができない栄養素。とくに甲状腺疾患の方は葉酸欠乏を起こしやすく、気を付けて摂っていく必要があるのです。

胎児は妊娠超初期からノンストップで細胞分裂を繰り返します。その際に葉酸が不足しないためにも、普段からしっかりと摂取しておきましょう。

参考:長崎甲状腺クリニック
https://www.nagasaki-clinic.com/topics/2017/194/

出産・出産後の変化

妊娠中大きく変動したホルモンも、出産後にゆっくりと元の状態に落ち着いてきます。出産後はほとんどの方が薬の量を減らしていき、その後の体調を見守ります。
赤ちゃんのお世話で大変な時期ですが、甲状腺の状態を定期的に見ていく必要がありますので、通院を続けながら体調を整えていきましょう。

参考:名古屋甲状腺診療所
http://www.kojin-kai.jp/nagoya/09_hashimoto/06_pregnancy.html

次の記事では、橋本病の症状について詳しく学びます。
「橋本病の症状」

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