カンガルーケアとは?

出産を控えたママが気になることの1つに「カンガルーケア」があります。
生まれたばかりの赤ちゃんをママが抱っこする、といえばイメージが湧きやすいですね。

出生してすぐの赤ちゃんを抱っこできるなんて感動的…!と、出産時にカンガルーケアを希望するママも少なくありません。
しかし、カンガルーケアに関連して悲しい事故が発生しているのもまた事実……。そのせいかはわかりませんが、「カンガルーケアは行いません」と明言している産院もあります。

「カンガルーケアをしてみたいけど不安もある」。
そんなママが安心して決断できるように、今回は、カンガルーケア・ガイドラインワーキンググループが編集した「根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン(普及版)」を中心に、カンガルーケアについて解説します。
この記事を通して、カンガルーケアとはどのようなものなのかを一緒に勉強してみませんか?

   

3つにわけて考えられる日本のカンガルーケア

「根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン(普及版)」によると、日本で推奨されているカンガルーケアは下の3パターンにわけられます。

1.健康な赤ちゃん(正期産児)へ出産直後に行うカンガルーケア
2.状態が落ち着いた、小さめの赤ちゃん(低出生体重児)に行うカンガルーケア
3.NICU(新生児集中治療室)で治療下の赤ちゃんに行うカンガルーケア

この中で出産前のママが悩むカンガルーケアは「1.健康な赤ちゃん(正期産児)へ出産直後に行うカンガルーケア」のこと。
今回はこちらについて詳しくご紹介していきますね。

   

健康な赤ちゃん(正期産児)に行うカンガルーケアとは

赤ちゃんが子宮の外に出ても問題ないと判断される時期に出産できた赤ちゃん(正期産児)で、健康に問題がない場合に行われるカンガルーケア。
ほかのパターンと区別して「早期皮膚接触(STU)」とも呼ばれており、産後すぐに下記のようなことをします。

“生まれて間もない児を、母親の素肌に胸と胸とを合わせるように抱かせ、その上から温かい掛け物で覆うこと”

これが広まったきっかけは、病院で出産する人たちが増えたからす。
私たちの2世代くらい前までは、産婆さんを自宅に呼んで自宅で出産するのが普通でした。ママと赤ちゃんは生まれた瞬間から、当たり前に同室で過ごしていたんですね。
それから病院出産が主流になってきたことで、生まれた直後に赤ちゃんを母親から引き離し、病院側で赤ちゃんの健康をしっかり管理する「生後早期の母子分離」が普及していきました。

このおかげで赤ちゃんの生存率は各段に上がりましたが、下記のデメリットも生まれたといわれています。

・母乳育児の成功率の低下
・赤ちゃんの不安感を解消しにくい
・母親に不安感や喪失感が生まれる可能性がある

これらのデメリットを解消するのが「カンガルーケア」の目的なんです。
ということで、次は「カンガルーケアの目的」を確認してみましょう。

参考:根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン(普及版)
http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/kc/fukyu/1_kc.pdf

   

カンガルーケアの目的

育児雑誌などでは「母子同室か別室、どちらを希望するか」という話題も取り上げられるほど「生後早期の母子分離」というのは私たちにとって当たり前になっています。
カンガルーケアは、産後にどうしても発生してしまうデメリットを解消する目的で導入されました。

【カンガルーケアの目的】

・母乳育児を成功させる
・赤ちゃんの呼吸や体温、泣き方を安定させる
・母親の不安を解消し、愛着行動を促進する

   

本来の目的とは違う形で浸透したカンガルーケア

本来のカンガルーケアとは、医療が発達していない発展途上国で広がったケア方法です。
生まれたばかりの赤ちゃんを保護する環境が整っていない状態で、産後すぐに赤ちゃんを抱っこすることで、赤ちゃんの体温の低下を阻止することができた、というのがカンガルーケアの始まりなのです。

日本は出産の環境が整っていますから、ママの肌で赤ちゃんの体温を保持する必要性はありません。日本の出産現場で行われるカンガルーケアは、前述したとおり、別の目的で発達したものなんですね。

   

カンガルーケアが与える赤ちゃんやママへの効果は?

カンガルーケアを行うことで、赤ちゃんママはこんな効果を体感できるといわれています。

   

赤ちゃんへの効果

・赤ちゃんの眠りが深くなり、おきている時も穏やかになる
・呼吸が規則的になり、安定する

ほかにも

・体温や血糖値が下がりにくくなる
・ママから常在菌を貰うことで感染予防になる

というメリットもあると言われています。

   

ママへの効果

・母乳保育が進む
・母子の関係が深まることで、『育児に自信を持ち、楽しむ余裕が生まれる』

と言われています。

産後にカンガルーケアを行うことで、ママは肌から“刺激”を受けます。この“刺激”のおかげで、ママの体内では「オキシトシン」というホルモンが分泌される、ということがわかっています。
このオキシトシン、実は「幸せホルモン」と言われているのをご存知ですか?
母乳の分泌を促したり、子宮を縮めるように命令したりするほか、ママの不安を和らげる効果もあり、育児には必要不可欠なホルモンなんですよ。

参考:国立医療機構小倉医療センター
http://www.kokura-hp.jp/sinryoka/sanka_fujin/kangal.html

   

出産時のカンガルーケアの流れ

さて、実際にカンガルーケアを導入している病院では、どのような流れでカンガルーケアを行っているのでしょうか?
ここである産院の一例をご紹介します。

   

   

・赤ちゃん誕生後、臍帯切断をし、温かいタオルで血液と羊水をふきとり、おむつだけをつけます。
・赤ちゃんをうつ伏せにし、お母さんと赤ちゃんの肌と肌を密着して抱いてもらい、バスタオルを掛け1~2時間過ごしていただきます。
・赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸いつくまで見守ります。

・お母さんの胸にうつ伏せになり肌をぴったり、くっつけることで赤ちゃんは安心して泣かなくなります。
・しばらくすると、お母さんのおっぱいを探し、這い上がって吸い始めます。こうすることで、赤ちゃんはお母さんのおっぱいの形を覚えます。
・赤ちゃんは、お母さんの肌の温もりで体温も下がることはありません。

   

こちらの病院では、臍帯、つまりへその緒を切ったあとにカンガルーケアを実施していますが、産院によってはへその緒を切る前にカンガルーケアをする産院もあるそうです。

参考:医療法人大平産婦人科
http://www.ohira-ladies.com/mam/kangaroo-care.html

   

カンガルーケアのリスクやデメリット

冒頭でも述べた通り、カンガルーケアでは悲しい事故も発生しています。そう聞くと、実際にカンガルーケアを行うのが怖くなってしまうママもいるのではないでしょうか。
ここで、実際に発生した事例をご紹介します。

   

実際に起こった事故事例

2010年、大阪府の病院で起こった出来事です。

事故が起きたのは大阪府内の総合病院。病院は2010年12月に正常分娩で生まれた女の赤ちゃんを出産直後の母親に胸の上で抱かせるカンガルーケアをさせていましたが、約2時間後に赤ちゃんの容体が急変し、一時呼吸停止に陥って脳に重い後遺症を負ったというもの。

この事故の責任を追及するためにママは裁判を起こしましたが、結局、最高裁は「後遺症はカンガルーケアによるものとは認められない」としてママの訴えを認めませんでした。

司法の場でカンガルーケアの危険性は証明されなかったわけですが、この事例では「事前に病院側からリスクの説明が無かった」ことや「赤ちゃんの様子を常に確認する医療従事者がいなかった」という事実はあったようです。

   

カンガルーケアを検討するときに気をつけるポイント

前章の「出産時のカンガルーケアの流れ」で述べたように、カンガルーケアは病院によってやり方が微妙に異なる場合があります。カンガルーケアを希望するママは、どのような流れで行われるのかを「事前に」「しっかり」確認しましょう。

「カンガルーケア・ガイドライン」によれば、下記の内容に気をつけることが大切です。

カンガルーケアを行う場合は、赤ちゃんの体温や顔色、酸素飽和度などに目を配り、安全性に最大限配慮して、周りの人が赤ちゃんのちょっとした変化にも気づくことができるような体制を整えましょう。

産後直後のママは気力体力ともに消耗しきっている状態なので、ママだけが赤ちゃんの様子を見るようなカンガルーケアには不安があります。新生児医療に詳しい医療従事者による看護体制がどのように整っているか、確認するべきです。

ちなみに、カンガルーケアの時間についてはガイドラインで下記のように言われています。

出生後30分以内から、出生後少なくとも最初の2時間または最初の授乳が終わるまで、カンガルーケアを続けることが母乳育児に効果があると言われています。

カンガルーケアを検討しているママは、産院のやり方が上記のガイドラインに沿っているかどうか、ぜひ事前にチェックしてください。

参考:根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン(普及版)
http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/kc/fukyu/1_kc.pdf

   

カンガルーケアをした!しない! ママの声

ここで、実際のママの声をご紹介しましょう。カンガルーケアをする選択をしたママ、しない選択をしたママ、それぞれのリアルな声も参考にしてくださいね。

   

カンガルーケアをしたママの声

カンガルーケアしました!超感動!
そのときの赤ちゃんの写真がかわいすぎて、いつ見返しても幸せな気持ちが蘇ります。

帝王切開で私自身はカンガルーケアできませんでしたが、かわりに旦那がカンガルーケアしてくれたのはとてもよい思い出。

産後、自分が元気だったからカンガルーケアできました。カンガルーケア中に夫と3人で撮った写真は宝物です。

赤ちゃんが決してきれいな状態で置かれるわけではないので、ちょっとビックリしましたが、「たった今、頑張って産まれてきたんだな~」と母になった実感を味わいました。そして、生まれてすぐの赤ちゃんの体温や体の重みを感じ、何とも言えない気持ちに。
小さな体で、一生懸命おっぱいのほうに上がってくる姿が愛おしかったです。
カンガルーケアを体験しないと分からない感動をぜひ味わってほしいな!と思います。

カンガルーケアを実施したママからは「よい記念になった」という声を多く聞くことができました。一生に一度しかないことですから、大切な思い出になることは間違いないようですね。

   

カンガルーケアをしなかったママの声

カンガルーケアはしていません。産院の方針が「産後のママの体を休める」というもので、カンガルーケアどころか退院まで母子別室でした。

カンガルーケアをしたかったけど、産院ではカンガルーケアをしていませんでした。するのが当たり前と思っていたら、なくて拍子抜。次はしたいです。

カンガルーケアはしませんでした。子供は生まれてすぐ産声を上げなかったので、保育器に連れて行かれて……それどころじゃなかったんです。
もし次があっても望みません。最初はカンガルーケアやってみたい!って思ってたけど、調べてたら結構、事故?も多いみたいなので。生まれてすぐ産声を聞けて、顔を見られるだけでも十分かなぁと思いました。
また、私は産後すぐにカンガルーケアする体力的、精神的余裕もない気がします。生まれたあとは分娩台でぐったりしてましたから…。

実は筆者も出産時にカンガルーケアをしませんでした。カンガルーケアをしない産院での出産だったからです。もしまた出産の機会があれば、産院の説明に安心・納得した上でカンガルーケアをしてみたいなぁ、と考えています。

   

カンガルーケアについて「納得」できる選択をしよう

カンガルーケアについてご紹介しましたがいかがでしたか?
「カンガルーケアをしてみたいけど不安だ」というママは、ノリや勢いで判断せず、事前にしっかりと調査して検討することが大切。
もちろん自分1人で考えるのではなく、ぜひパパにも相談をしましょう。パパがカンガルーケアをするという選択肢だって考えられますからね。

ママ自身も家族も納得できる選択ができるように応援しています。

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